道民公開講座のご報告

平成24年12月8日、小樽経済センタービル4Fにて、道民公開講座「0歳から100歳までの歯っぴーフォーラム」が開催されました。講師として北海道大学病院歯科診療センターの兼平孝先生をお招きし、子どもの歯と顎の発達、口腔乾燥症、口臭、咬む健康法についてお話いただきました。以下に内容をご報告させていただきます。

子どもの歯を顎の健全な発達において重要なことには、健康増進に関することと、虫歯の予防に関することがあります。健康増進においては、成長発育に必要なホルモンの分泌が乱れないように早寝、早起きの生活習慣を確立すること、そして、1日3回の食事、とりわけ朝食においてバランスの取れた栄養を摂取することが大切です。また外遊びや適切な運動も大切で、これらは、骨や筋肉などの成長に必要な刺激と日光によるビタミンDの活性化をもたらします。 

食事をよくかむことは、むかしから、消化に良い、美味しく食べられる。発育に良い、唾液分泌を促す、口の中をきれいにする、という意義が知られていましたが、近年では、肥満の防止、精神状態の安定、脳の血流量の増加、認知症の予防などに関連することが、明らかになってきています。 

虫歯の予防においては、正しい歯磨き、間食の適切な摂取、かかりつけの歯科医をもつこと、フッ素の応用、唾液を出す生活が大切です。虫歯予防にはフッ素の応用が有効であり、北海道も、北海道歯・口腔の健康づくり8020条例において、フッ化物洗口の普及をうたっています。 

 口腔乾燥症の話 

年をとるとともに唾液がでなくなることがあります。ドライマウス、口腔乾燥症とよばれる症状です。これは口渇、いわゆる「のどの渇き」とはことなり、唾液の量が減ることによる、持続的な口の乾燥であり、水を飲んでも効果は一時的なものにとどまります。典型的な症状には、口の渇き、乾いたものが食べにくい、虫歯や歯周病の悪化、ひどい口臭、摂食嚥下の困難、味覚や嗅覚の異常があります。原因として、口呼吸、薬の副作用、全身の病気、加齢、ストレス、食生活の変化、放射線治療後の後遺症があります。ドライマウスへの対応は、原因に応じて、原因除去、対症療法、生活指導などがありますが、治療はまだ発展途上という面もあります。 

 口臭の話 

いわゆる口臭とは、口の臭いと吐く息の臭いの混じったものであり、しゃべる、食べる息を吐くなど、口を開けた時に出る臭いです。通常無臭または軽度の臭いであり、これは生理的な口臭と呼ばれます。口臭の原因には、口の中の乾燥、歯磨きの不良、歯や歯茎の病気、膿栓、特定の病気がありますが、しばしば複数の要因が関与しています。また生活が不規則な人やしゃべるのが仕事の人、唾液を減らす可能性のある薬を服用する人は、口の中が乾燥しやすく、やはり口が臭くなりやすい傾向があります。また朝起きときや緊張のあと、お腹がすいたときは誰でも口が臭くなりやすいです。さらに気にしていた臭いが、口臭ではなく加齢臭ということもあります。口臭の対策としては、健康増進、唾液の出る生活が重要であり、また口の中の垢をスポンジブラシで落とすことも効果的です。 

 かむ健康法 

ホーレス・フレッチャーは健康法において、本当に空腹を感じるまで食べないこと、よく噛むことを提唱しました。また日野原重明先生は「病気にならない15の食習慣」において、よくかむことで、脳が活性化されると説いています。地三郎先生は「100歳時代を生き抜く力」にて、よく噛むと身体まで健康になる、長生きしたければ「ひとくち30かみ」、認知症予防もかむことから、とかむ大切さを説きました。(南出保)

ご講演中の兼平先生

ご講演中の兼平先生 
会場の様子

会場の様子

当日の小樽は、あいにくの強い吹雪に見舞われましたが、地域住民や学生、地元の報道機関をふくむ42名にご参加いただき、兼平先生の講演後には、活発な質疑応答も行われ、道民公開講座は、盛会のうちに終了いたしました。