フッ素洗口推進研修会 8月24日秋田市

秋田の佐藤勤一からのメールです。

8月24日に、秋田県横手市で東北大学の田浦先生、新潟県福祉保健部の清田先生を講師に招いて「フッ素洗口推進研修会」が開催されました。概略をご報告いたします。 

秋田県では平成16年?18年の間、県行政が主体となって、5歳児を対象としたフッ化物洗口事業「お口ぶくぶく大作戦」が実施された。平成19年度からは市町村事業として引き継がれる事になり、県南部の横手市では、地元の横手・ひらか歯科医師会の熱心な働きかけが功を奏して、市の健康作り計画「健康よこて21」のなかで、歯の健康の取り組みとして、園児、児童生徒らに対するフッ素洗口の実施が明記された。フッ化物洗口事業は市議会で可決され、平成19年度から市内の幼稚園・保育所の37施設、小学校25校、 中学校12校の全てを対象に実施される運びとなった。(対象者総数2,080名) 

事業化に伴ない、平鹿地域振興局(横手保健所)が主催して「フッ素洗口推進研修会」が8月21日(火) に横手市平鹿生涯学習センターを会場に開催された。当日は県行政・市行政関係者、教育委員会、教職員、歯科医師、歯科衛生士など90名を超える参加が有った。研修会は講演が二題、養護教諭のフッ素洗口実践報告、意見交換会という次第であった。 

初めに、「フッ素洗口の有効性と安全性について」と題して東北大学の田浦勝彦先生の講演が行われた。その内訳はフッ素の身体に対する有用性、特にむし歯予防効果や安全性に、フロリデーションなど世界的なフッ化物応用の歴史と実績、また国内でのフッ化物洗口の状況などについて、時には反対論者の意見も交えて、特に安全性については「フッ化物洗口ガイドライン」の紹介と、健康情報の信頼性評価のステップを示しながら情報を正しく判断する事の重要性を強調された。 

最後に児童憲章の「すべての児童は適当な栄養と住居と被服が与えられ、疾病と災害から守られる」の文言や、公衆衛生学的なむし歯予防の意義としての“Going upstream!”を紹介された。 

次に、「新潟県におけるフッ化物応用の取り組みについて」と題して新潟県福祉保健部健康対策課主査の清田義和先生より講演が行われた。まず初めにさる7月16日に発生した新潟県中越沖地震に際しての、行政、歯科医師会での歯科医療救護体制について説明され、地震当日に歯科医師会に対策本部が設置され、3日後の7月19日には被災地の柏崎市に歯科医療救護所を設置し、僅か3日間のうちに75名の応急処置を行った事や、避難所での口腔ケアーの指導がのべ1,000名以上に対して行われた事が報告されると、会場からは驚嘆の声が上がった。 

新潟県では平成18年度に12歳児の一人平均むし歯数が0.99本と、全国で始めて1本を下回った事、におけるフッ化物洗口の実施状況や、子供の歯を守る会の紹介などむし歯予防事業の考え方と実施の方策、費用対効果や成人期における予防効果の持続性などの解説がなされた。さらにフッ化物洗口の開始の地と言える弥彦小学校での永久歯むし歯予防プログラムの内容と、選択的応用シーラントとして学校健診でC0に対して50%に対して歯科医院でシーラント処置がなされている事などが功を奏して、現在学童の9割がカリエスフリーで有る事が紹介された。この中で本年3月に「フッ化物洗口マニュアル」が新潟県歯科保健協会(http://niigata-dhs.com/index.html)から発行されたことが注目された。 

意見交換では、主に教職員から、フッ化物洗口実施に際して、時間的な余裕を作る事が困難なことや、学校側に任せきりで、関係組織のバックアップが得られていない現実が有る事、薬剤の管理や調剤の問題点、実施後の学校歯科医側の指導・協力を得たい事などの課題が提起された。研修会は、田浦先生から「みんなの健康をみんなで守ろうという意識が大切ではないか、やれない事を言うよりもどうやれば出来るか、それを考えて知恵を出し合う事こそが行政、教育、医療の「プロ」として必要ではないか。Both winという言葉が有ります。」という総括で締め括られた。願わくはこの研修会が、「お口ぶくぶく大作戦」終了後の秋田で、市町村事業としてのフッ化物洗口の出発点となる事を期待しします。