道民公開講座のご報告

平成26年2月8日、苫小牧市のグランドホテルニュー王子にて、オリンピック女子平泳ぎ元日本代表田中雅美さん、北海道上川保健所主任技師丹下貴司先生、苫小牧歯科医師会公衆衛生学校担当理事三上格先生をお招きして、道民公開講座「8020スマイルフォーラム in 苫小牧」が開催されましたのでご報告いたします。

田中雅美さんには「アスリートとお口の関係」と題しまして、現役時代の経験などにつきまして、ご講演いただきました。当日は、出席者は本会会員を含む82名にご参加いただき、講演後には、パネルディスカッションも行われ、盛会のうちに終了いたしました。

以下に内容をご報告させていただきます。

ご挨拶中の加藤清志先生
ご講演中の田中雅美さん

■苫小牧歯科医師会会長挨拶 
 
ご挨拶中の加藤清志先生 

はじめに、苫小牧歯科医師会会長加藤清志先生より8020運動についてのお話がありました。8020運動は26年前に愛知県豊田市からスタートした歯科保健についての運動であることについて、そして、8020の実現には、子供のころからの予防が大切であることについてお話がありました。 


■アスリートとお口の関係(田中雅美さん) 
 
ご講演中の田中雅美さん 

オリンピック女子平泳ぎ元日本代表田中雅美さんからは、アスリートと健康について、現役時代の失敗談を交えて、お話いただきました。現在では、アスリートはオリンピック代表に選ばれると国立スポーツ科学センター(totoの資金にて設立されたそうです)にて健康診断を受けることになりますが、2000年シドニーオリンピック前年の、1999年のパンパシフィック選手権では、そのような健康診断は必須ではありませんでした。アスリートは、健康に気を使う一方で、限界まで体を追い込んでトレーニングを行います。そのような状況もあり、歯の治療を放置している部分があったのですが、そのせいで、パンパシフィック選手権のためタスマニアにてトレーニング中に、歯の痛みと微熱が出てしまいました。そのときは結局、現地の病院で解熱をしてもらったり、現地の歯科で抜歯をすることになってしまい、大会では思うような結果を残せませんでした。しかし、翌年のシドニーオリンピックでは地元からFaxなどの応援もあり、個人では6位と7位の成績でしたが、メドレーリレーでは、銅メダルを獲得することができました。 

日本は、ロンドンオリンピックから選手村の近くに、マルチサポートハウスと呼ばれる施設を準備し、そこでの食堂ではおいしい日本食が用意され、疲労回復のための交代浴、マッサージ室など、選手をサポートするさまざまな環境が整えられており、日本は過去最多38個のメダルを獲得しました。しかし、歯の痛みがあれば、食事も摂れず、このような施設があっても、疲労回復は不十分になることでしょう。 

8020運動を知ったのは3年前のことですが、子供たちの夢の達成のためにも、歯を守る運動が広がるとうれしいと思います。 


■北海道の8020推進条例ってなに?(丹下貴司先生) 

ご講演中の丹下貴司先生

ご講演中の丹下貴司先生 

歯の健康は全身に影響することが知られています。日本は男女合わせると世界一の長寿国ですが、日本が更なる長寿国を目指すうえで、歯を失う理由であるむし歯と歯周病はともに予防できる病気であるため、これらの対策が重要となってきます。 

8020運動とは80歳まで20本以上歯を残そうという歯科保健運動です。北海道のむし歯の現状は、3歳児健診の時点で全国より虫歯が多く、12歳児では全国の一人当たり1.1本のところ、北海道では一人当たり1.5となっています。また成人期の歯の本数の平均は全国で14.2本のところ、北海道では11本、8020達成者は全国で40.2%のところ北海道では27.3%と、すべてのライフステージにおいて北海道は全国平均を下回っています。 

8020条例では科学的根拠に基づいたむし歯予防である、フッ化物を用いたむし歯予防を推進しております。道内でフッ化物洗口を1施設以上行っている市町村は、条例制定前の28市町村(平成22年4月)だったところ、現在では159市町村(平成25年12月)となりました。

これからも道内でのフッ化物洗口事業がいっそう普及しますよう、皆様のご協力をよろしくお願いします。 

■苫小牧をむし歯のない子供が多い街にしたい(三上格先生)

パネルディスカッション中の三上格先生

パネルディスカッション中の三上格先生 

子供の歯は幼稚園、小学校、中学校と進級するにつれ、乳歯、混合歯列、永久歯と代わります。その変化を通じて、生涯にわたり健康でいて欲しい、生涯にわたり自分の歯で食べて欲しいと思います。そのためには、やはり健康な歯が大切となります。 

平成25年の12歳児むし歯本数は、全国で1.1本、北海道で1.5本、苫小牧で1.75本となっています。また、この数字には乳歯の虫歯が入っていないため実際の口の中のむし歯の本数はもっと多くなっています。また苫小牧では40%の児童に未処置の虫歯があり、これは家庭環境の違いを反映しているものと思われます。 

苫小牧市は、フッ化物洗口を行っている新潟県村上市の10年前のむし歯の本数となっており、これらの差を縮めるためには、全学童に平等に恩恵のあるフッ化物の応用が必要だと思われます。フッ化物の応用法には、フッ化物配合歯磨き剤の利用、水道水へのフッ化物添加などがあります。健康を守るためにフッ化物を上手に利用しましょう。(南出保)