平成30年度総会記念講演会のご報告

【平成30年度総会記念講演会 報告】 
小児在宅歯科医療の実際〜医療的ケア児の在宅生活を支援する多職種協働〜 
講師:高井理人 先生 医療法人稲生会 生涯医療クリニックさっぽろ 
日時:平成30年4月21日 16時〜17時30分 
会場:北海道歯科医師会館 視聴覚室 
参加人数:40名

平成30年度の保険改定で、小児在宅歯科医療の保険点数が新設されました。項目としては小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料です。小児に対する歯科訪問診療の件数は全体としてはまだ少ないものの、ニーズは一定数あることが高井先生の研究で明らかになっており、その研究も今回の改定の根拠の一つとなっています。小児に対する歯科訪問治療のニーズを調査した結果、口腔ケア、歯の萌出に関する問題、歯石沈着など多岐に渡っていた。また、すべての患者に口腔清掃指導が必要であり、摂食機能療法や歯石除去などが行われていた。このようなニーズの増加には、医療的ケア児が増加していることが関係している。医療的ケア児は平成28年の児童福祉法の改正により、初めて法律に明記された。医療的ケア児は10年で約2倍になっており、今後も増加していくと考えられる。在宅医療の対象となる小児の特徴としては、医療依存度が高い、成長にしたがって病態が変化していく、本人とのコミュニケーションが困難なことが多い、などが挙げられ、小児在宅歯科医療を行ううえで考慮する必要がある。そのような中、高井先生の勤務されている生涯医療クリニックさっぽろでは、北海道小児等在宅医療連携拠点事業YeLL[いぇーる]を担っている。 

実際に高井先生が行われている訪問歯科での対応としては、口腔ケア指導や摂食機能療法、歯石除去、乳歯抜去、フッ化物塗布を主に行われているとのことでした。訪問診療で対応できない内容については病院歯科へ依頼されており、訪問歯科診療の継続性としては82%の方が継続利用されているとのこと。 

小児在宅医療の必要性は歯科・医科ともに高まっており、通院が困難な小児患者の継続的な受診手段として有効である。一方で、在宅重症児は医療依存度が高く、主治医との情報共有や、病院歯科との連携が必要となってくる。さらに多職種でのアプローチが有効であるとされていました。 
(報告 中村 光一 記) 

講演後の質疑応答では、熱心な参加者から多くの質問がありました。先生の今後のご活躍に目が離せません。