会員研修会 中村譲治先生 会員研修会報告便り

2009年10月の会員研修会では、2008年11月の築山先生に引き続き、予防歯科を通じて明るい歯科医院づくりをめざしているという、NPO法人well-beingの中村譲治先生をお招きし、医療の最終目的や歯科医療の目指すものについて、お話しいただきました。特に予防歯科につきましては、スタンダードや原則、システムから実際まで、きめ細やかにお話しいただき、さっそく明るい歯科医院づくりを目指し始めている参加者も数多いのではないでしょうか。

以下に内容をかいつまんで、まとめました。

大好き予防歯科〜明るい歯科医院づくりをめざして〜 
 講師:中村譲治 先生 福岡市 なかむら歯科医院 院長 
 日時:平成21年10月25日(日) 9:45〜11:45 
 会場:札幌市教育文化会館 3階 研修室 305

■医療の最終目的は健康な住民を増やすのが目的です 
中村先生は、まず、歯科医師法第一条にある「国民の健康な生活」という表現を評価し、健康な住民を増やすことが医療の最終的な目的である、と強調しました。 

■健康ってなに? 
「健康な生活」を評価するため、Smith(1983)の整理した4つの健康モデルを示され、なかでも4つめにあたる健康モデル(Eudaimonistic Model, Maslo)から、健康とは、健やかに生きる(well-being)、自己実現(self-realization)ができている状態である、とのことでした。 

■歯科医療がめざすものは? 
これらの整理から、歯科医療が目指すのは、健康(health)を通じた生活の質(QoL)の向上であり、また人々の幸福(well-being)の追求である、と示され、人々の誕生から寿命を迎えるまで、全てのプロセスで元気で幸せに暮らせるようにすること、そのため環境(家庭、職場、学校、地域)の整備に専門家として関わることが重要である、とのことでした。 

■予防歯科のスタンダードとは 
ここからは、開業医の誰もができる予防歯科をめざして、というサブテーマで、予防歯科のスタンダードについてお話いただきました。 

■臨床予防歯科の原則 
導入部分の知見から、予防歯科の原則として、以下のようにまとめられました。1)ゴールはwell-being。2)主役は患者自身。3)長期に継続した来院。4)健康教育と環境整備を視野に入れる。5)予防のベースはフッ化物。 

■予防歯科のスタンダードなシステムとは 
同様に、予防歯科のスタンダードなシステムとして、1)治療終了から定期健診につなげるオリエンテーション。2)定期的なリコールを無駄なく確実に来院者に伝えるインフォメーション。3)継続的サポートを的確なものとする記録のファイリング。4)診断結果に基づく予防処置を実施する診療体制。5)スムースで無駄のない健康教育が実施できるようにするスタッフ間のコミュニケーション、が必要とのことです。 

■予防歯科に必要な知識と技術 
同様に、予防歯科に必要な知識と技術として、1)基礎的なう蝕と歯周病の病因論。2)健康教育の理論とその技術。3)効果的な健康教育を可能にするコミュニケーションの理論と技術。4)的確な予防計画が立案できるための診断能力。5)フッ素塗布、シーラント、プロービング、PTCを実施できる理論と技術、を挙げられました。 

■システムづくりに必要な作業 
まとめとして、このようなシステムづくりに必要な作業として、1)院内のコンセプトづくり。2)定期健診のオリエンテーションの内容の検討。3)定期健診の説明パンフレットやオリエンテーション時のプレゼンの媒体作成。4)定期健診予約カードのデザイン及び作成。5)治療開始から入金、リコールまでの流れ図とシステムづくり。6)定期健診開始時の問診表の作成。7)定期健診用カルテの作成。8)来院から健診、予防処置、次回予約までの流れと各スタッフの役割の決定、等を挙げられ、予防歯科のスタンダードとは院内のコンセプトづくりからはじまる、包括的な取り組みであると理解しました。 
ご講演中の中村先生1 
 
ご講演中の中村先生2 
 
南出保 記す