会員研修会 人はなぜ虫歯や病気になるのか 〜健康の社会的決定要因の視点から考える〜

平成19年度 第63回 守る会研修会 
講師 北海道子どもの歯を守る会理事 南出 保先生 
座長 北海道医療大学歯学部教授 千葉 逸朗先生 
日時 2008年2月23日(土)16:30〜18:30 
開催場所 北海道歯科医師会館4F

健康と環境の関係については、疫学の祖ヒポクラテスによる指摘以来、社会改革者や医学者により何度となく強調されてきました。

保健機関としては、1974年のカナダ保健省はラロンド・レポートで環境の重要性を認めると、1979年にはアメリカ保健教育福祉省からラロンド・レポートを追認するヘルシー・ピープルが公開され、健康と環境の関係を統合する概念の整理が待たれることとなりました。これらの期待から、1984年世界保健機関は、環境と健康との関連を認め、また公衆衛生の一大ジレンマである個人の選択と社会的義務を統合する手法として、環境の改善と、環境を介した生活様式の改善を健康づくりの基本的精神としてまとめ、1986年には、健康づくりのためのオタワ憲章が採択され、これらの指針から1998年には環境要因のなかでも社会的要因の重要性を明らかとする、健康の社会的決定要因という概念が整理されました。

健康の社会的決定要因からは、以下のような保健プログラムが導かれることが明らかとなっています。保健教育の効果は限定的であり、そこから生じる無力感と犠牲者非難を考慮すること;さまざまな病気に影響を与える要因を疾病別に管理するではなく健康づくりに一元化すること;健康を個人単位で考えるのは効果的ではないこと;健康格差へのとりくみとは、健康の社会的決定要因へのとりくみに他ならないこと;下流での救命から上流の改善へ;健康的な選択を、よりやさしい選択に!

質疑応答では、日本では専門職であっても寿命の短い職業もある、効果的な保健教育は集団の健康に寄与するという研究も出てきている、といった意見もありましたが、健康の社会的決定要因とは、錯覚やバイアスではなく、存在すると仮定した方が、合理的にさまざまな資料を読み解けることを認めるという点につきましては、ある程度の合意が獲得されたのではないかと、演者としてはそのように期待しています。

当日の資料は下記をチェックして下さい。 研修会資料

健康の社会的決定要因(Social determinants of health) 
人の健康は,個人の生物医学的要因や行動だけでなく,さまざまな社会環境の影響を受けている. 
(Dahlgren G, and Whitehead M in the Acheson Report, 1998)